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「パリ協定」が発効できるのはいつか? インタラクティブ・マップが明らかにする

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昨年COP21で採択されたパリ協定の署名式が来週開催され、100カ国以上の首脳や政府高官がその開催地であるニューヨークを訪れる見込みだ。国連は、署名初日に調印する国の数は、過去のいずれの国際協定をも上回ると予測しており、世界全体の気候変動に対する圧倒的な政治的支援を示している。

署名は、パリ協定に公式に参加する国が行う二段階のプロセスの1つ目で、その後に批准へと移る。世界全体の温室効果ガス排出量の55パーセント以上に相当する「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」締約国55カ国がこのプロセスを完了した時点で、パリ協定は「発効」、すなわち効力を発し、法的拘束力を持つことになる。

国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、参加国・地域のリーダーに対しパリ協定への迅速な署名・批准を求めている。この勢いは既に始まっており、4月22日に予定されている署名式より前に、パリ協定批准の承認を国会から得ている国は多い。

しかし、いつまでに各国は批准するだろうか? また、どのような国がユニークに混ざり合い、パリ協定を発効させる「55-55」の敷居をまたぐ必要かあるだろうか?

「パリ協定トラッカー」の導入

今日、世界資源研究所(WRI)は、「パリ協定トラッカーParis Agreement Tracker」を発表した。このインタラクティブ・ツールを使用することで、パリ協定の批准に向けた各国の進展が監視できるようになる。また、ユーザーは、自身で考えたパリ協定を発効させる上で批准が必要な国の組み合わせをこのツール上で作成し、共有や埋め込みをすることができる。

下記で実際に試してみてほしい。

このブログを書いている時点では、協定に署名・批准している国はまだないため、「パリ協定トラッカーマップ」はブランクである。マップ上で国をタップしたり、地域・交渉グループを選択することで、どのような国の組み合わせがこの排出量と参加国の要件を超える可能性があるかを見ることできる。

以下に容易に分かるいくつかの洞察を挙げた。

排出量の多い国上位4位の内、いずれかの批准が必要である。

下記のシナリオからも分かるように、他の参加国が全てパリ協定を批准した場合でも、排出量の多い上位4位(中国、米国、EU、ロシア)の内、1つ以上が批准しないとこの協定を発効することはできない。

米国と中国は両国で最大、しかし全てではない。

米国と中国の両国は、4月22日にパリ協定に署名する意向を発表し、年内「できるだけ早期」の批准を約束した。しかし、各国はパリ協定批准前にそれぞれ、国内のプロセスを経る必要がある。米国では大統領の権限に基づいて批准できる一方、中国では全国人民代表大会常務委員会の承認も必要だ。

米国と中国は、両国で世界全体の排出量の約38%を占め、この協定の発効要件への到達に大きな後押しとなる。  しかし、迅速に55%の排出量という要件をクリアするには、ロシア、インド、日本、ブラジル、カナダ、韓国やメキシコなどの比較的排出量の多い国の早期参加が必要だ。

我々は今どこにいるのか?

フィジー、パラオ、マーシャル諸島、モルディブやスイスなどの多くの国が、既に国内の承認プロセスを済ませ、4月22日にパリ協定への署名・批准をできる状態にある。また、ツバルなどでも、署名式までに国内の承認プロセスを完了させることを表明した。

これらの国の排出量は世界全体から見ればわずかだが、早期批准に向けた彼らのリーダーシップは、必要とされる55カ国に到達するために重要だ。その他の島国や発展途上国、気候脆弱性フォーラムのメンバー国などが批准すれば、容易に到達するであろう。

パリ協定の発効までにどの程度時間を要するか?

パリ協定の発効は2017年と考えるのが妥当だが、多くの国が今年中に批准し、協定の発効要件をクリアすることも可能だ。しかし、国内承認プロセス完了のスケジュールが国によって異なることを考えると、パリ協定発効の時期は不透明である。 

例えば、オーストラリアでは、国会での通知と協定の提出のみが必要となる一方、メキシコでは上院議会の承認も必要となる。  また、ブラジルでは国民会議の承認も必要となり、これは、国会の2つの別々の議院からの承認を求めることを意味する。またベトナムのような国では、国際協定の性質によって異なる承認プロセスが適用される。

EUは、パリ協定に対し1つのまとまった「一団」として考えられるが、28の加盟国と共同で行動しなければならないだろう。各加盟国は、それぞれの国内承認プロセスを済ませなければならない。また、閣僚会議が、欧州議会の同意を得て、批准の決定を採択する必要がある。  これには数年を要する可能性があるが、パリ協定の早期発効はEUの批准がなくても可能だ。

パリ協定を、前回の気候変動に関する国際協定である京都議定書のプロセスと比較する人もいるが、この2つの協定にはいくつかの重要な違いがある。京都議定書でも同様に「55カ国/排出量の55%」というアプローチに従ったが、その要件は、発展途上国の二酸化炭素排出量のみに基づいていた。対照的に、パリ協定の発効では、全ての国の温室効果ガス総排出量が考慮される。そのため京都議定書の7年よりももっと早く法的効力を持つようになるはずだ。

「パリ協定トラッカー」は、この気候変動に関する国際協定の発効に向けて全ての国が動くことの重要性を示している。4月22日は、昨年12月に始まったことの次のステップを意味する。全ての国が、気候変動に強い低炭素型社会に向けて動くという強いサインを送ることができるようになった段階で早急にパリ協定に署名・批准することが必要だ。

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